あざみ野の庭

GOOD DESIGN賞 2019 受賞 / 造園学会「ランドスケープ作品選集2020」掲載作品
  • 2019/03/01
  • 住宅系ランドスケープ
現代社会の入会地を創る
当該敷地は、平和な江戸時代中期に流行した、山岳信仰のメッカ大山詣の主要動線である「大山街道」の荏田宿場の近郊エリアである。現地周辺の江戸時代の絵地図や明治初期の古地図の分析を通し、尾根と谷戸がリズミカルに入り組んだ丘陵地を入会地として、いくつもの農村集落が、豊かな営みを紡いできたことが容易に想像出来る地域である。陽当り良好な南側傾斜の入会地を持つ農村集落の空間構造を把握した上で、雑木林での営みをコミュニティの基盤と考え、生活景をイメージするランドスケープが構成された。
サステイナブル・コミュニティ
当該敷地は、都市銀行の研修センター跡地に、戸建て住宅60戸と低層集合住宅111戸を同時に建設するという意欲的な企画でスタートした。若い世代向けの集合住宅と中高年世代が主となる戸建て住宅街において、ライフステージに合わせた住み替えを想定し、ひとつの大きな多世代コミュニティとして、お互いの相乗効果によりサステイナブルなコミュニティ形成を目指した。戸建て住宅街と集合住宅との外部空間の共通言語として「Bio-Diversity」がテーマとなった。各個人が生活空間における自然環境がネットワークとして人と人をつなぐ基盤となることを目指して、ランドスケープや建築の計画が進められた。
具体的には、戸建て住宅街の戸境フェンスに沿って生物層が豊かになる植栽帯を計画し、その線的な空間を集合住宅の緑地帯と繋ぎ、昆虫や小動物が多様な生態を定着する事を意識した。それらの計画は、一般社団法人いきもの共生事業推進協議会「いきもの共生事業所(ABINC)」として認定された。
広場の連鎖が大きな集落を形成する
通常であれば常緑樹の密植が求められる事の多い、駐車場と住棟との間のバッファー緑地を、あえて落葉樹主体の遊歩道化し、要所に小さな辻広場を設けることで、階段ごとの小さなコミュニティ生み出すと共に、広場の連鎖がひとつの大きな集落を形成することを目指した。6ヶ所に計画された小さな広場のデザインは、明確な機能を持った「べンチ」を置くのではなく、ちょっとした段差や小さな壁を意図的に配置することで、住民が自分で「場」を発見して獲得する行為を誘発し「愛着」を育てようと考えた。様々な小さな「コト」の連鎖が、集合住宅における新しい「関係」を創出する。

その他の実績

お問い合わせ

ランドスケープの設計 / 遊び場の計画 / まちづくり / 総合的な学習の時間など、ご相談ください。

お問い合わせフォーム