芦花の丘かたるぱ保育園

造園学会「ランドスケープ作品選集2020」掲載作品
  • 2018/04/01
  • 都市系ランドスケープ
公園からはじまる「地域子育て」
当該案件は、平成 29 年度の都市公園法改正に先駆け、世田谷区が仕掛けた「国家戦略特区事業」として計画された、都市公園(都立蘆花恒春園)内の保育園である。地元住民に大人気の緑豊かな公園ではあるが、建設予定地の地中より昭和初期の産業廃棄物が大量に発見され、土壌汚染対策法の指定基準を超える「鉛及びその化合物」が検出されたため、数力月の土壌置換対策工事を実施した。その期間を使い保母とのワークショップを通し、保育のあり方に関する考え方を共有し、設計に反映させる事が可能となった。また公園愛護会の方々とは、園芸活動を通した「地域子育て」の方策に関して議論しながら設計を進めた。
ランドスケープ設計者は、これら一連のワークショップを建築家と協働で企画・実行した結果、部屋の中から園庭を通り公園全域へ繋がる「シームレス」な遊び体験空間を設計した。これらの空間で、より豊かで創造的な原体験を実現するため、近隣住民が積極的に保育に参画出来る外部空間を目した。
「遊び」とは何?を具現化する
大人は「遊びは楽しい行為」と思いがちではあるが、多くの研究者とのこどもの遊びに関する本質的な議論を通して、設計チームは「好きな時に好きな事に集中できる空間」こそが、こども達の自己肯定感を高める環境計画の基本と位置付けた。また自然遊びを通して、自然を慈しんだり、四季の移ろいを感じるだけでなく、異年齢のこどもに対して憧れたり護ったりする感覚や、自分の身体把握能力を高める事に関しても様々な想定を検討した上で、外部空間と建築内部空間の連続的なシークエンスを検討した。
境界線を空間化する
当該案件は、公園内の丘陵ゾーンに計画されたため、敷地の地形をイメージして建築の大屋根のデザインを検討することで、ランドスケープと建築空間が呼応する関係を意識した。また公園の雑木林と繋がる園庭側の樹木は、移植することで元来の空気感を継承する様に努めた。
またエントランスエリアは、公園内の主要動線に接するため、通常であればフェンス寺の明確な隔離措置が望まれる場面であるが、事前ワークショップを通し、地域子育ての価値を管理者に理解して貰うことで、むしろ住民がたむろする事による目線パワーが保育空間の安全安心を担保すると考え、大規模な縁側と滞留空間としての雑木林を計画した。

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