つくば市竹園1丁目

  • 2020/11/01
  • 都市系ランドスケープ
筑波研究学園都市の外部空間
1960年代に開発がスタートした筑波研究学園都市では、1980年時点で 7,755戸の国家公務員住宅宿舎が竣工し、豊かな緑地空間を確保した中・低層集合住宅群の住宅地として良好な都市環境を獲得していた。また広域に点在する住宅地群と様々な施設は、ペデストリアンデッキと呼ばれる歩行者専用空間で結ばれており、外部空間の最大の特徴となっている。このペデストリアンデッキは、移動空間としてだけでなく、近接する公園等の公共空間と一体となる緑豊かな交流空間としても機能しており、「歩いて暮らせる」都市の理想像として知られてきた。
2001年、多くの研究・教育機関の独立行政法人化に伴い、当時の政府が一部の宿舎処分を決定し、2005年を皮切りに多くの国家公務員宿舎が売却される事となった。国家公務員宿舎削減計画により、中・低層宿舎をデベロッパーヘの土地売却により高層化し、良好な都市環境に更新することで、新規居住者を誘引しつつ現居住者の住替えを促進する事が目標とされたが、結果的には、中心市街地の人口は減少し、行政による外部空間の管理頻度が低下、昼間でも危険に感じる様な公共空間が生まれている。
公私境界空間の在り方を問う
つくば市において、多くの私企業が中・高層集合住宅の開発に参画しているが、敷地内と公共空間の境界部分におけるセキュリティ感覚のずれが顕在化し、「緑豊かな交流空間」であるべきペデストリアンデッキとの接道空間が閉鎖的となるケースが多く、都市全体の安全性が危惧されている。本案件敷地を含む都心地区では、3,394戸の国家公務員宿舎のうち約7割が廃止決定され、住民退去の後、街全体が廃墟化している。
本案件の敷地は、地区計画により、遊歩道に隣接する部分は道路境界線から幅員1mの緑地帯が義務付けられているだけであるが、積極的にマンション敷地内の外部空間を公的空間に公開する事で、街全体の歩行空間の回遊性を高め、地域の安全で快適な都市環境の創造に寄与する事が、ランドスケープ設計の目標となった。
外部空間の公共貢献の理想像を求めて
本案件では、私有地であるマンション敷地と公的な都市公園との「境界線を交流空間化」する事で、市民に開かれた一体的な緑地空間を創出した。具体的には、公開空地指定のない集合住宅敷地内の緑地と公共空間であるペデストリアンデッキの接合部を滞留空間とした。また隣接する街区公園との境界部分に計画された避難通路を積極的に広場化すると共に、木製デッキ広場等の交流空間を隣接させ、利用者が境界線を超えて自由に出入り可能な設計とした。
行政における緑化事前協議において、利用者が減少していた隣接する街区公園に関する様々な改良提案を行った結果、集合住宅の外部空間の設計と連動した公園のリノベーション設計・施工が許可された。そこで公園全体を芝生化する事で利用者増加を図る一方、カフェの誘致や芝生育成活動の継続化を通し、地域カアップを重視した都市空間の再生を試みた。Park-PFIの事例が増える中、隣接マンション計画と連動させた、新たな公園リノベーションの提案でもある。

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